ジャンプ部屋ブログ

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感想&書評ネタバレ注意「紙の月:角田光代」最終的には横領事件の犯人となってしまう…。 #小説


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紙の月 角田光代 ~人間の欲望が堕落へと変わる~

この小説はサスペンスではないのに、どこかはらはら・ひやひやさせるそんな作品であった。主人公の平凡な日常が、「少しだけ」「今だけ」という甘い気持ちにより大きく人生が狂い始める。最終的には横領事件の犯人となってしまう訳だが、しかし堕落していくその過程は、誰もがその危険性を持ち合わせているような気がしてならない。

特にクレジットカードを少し多目に使ってしまった時の後悔、その時の自分自身に言い聞かせる言葉など、心理描写がとても細かく、私も体験したことがあるだけに、「梨花のしていることは自分ももしかしたらしてしまうかもしれない、、」という錯覚に陥った。また梨花の正義感の強さがこの事件のきっかけではないかと感じてしまっただけに、横領事件の犯人であるという事実にも関わらず、「彼女は決してそんな人ではない」と擁護してしまいそうになる。
この小説のもうひとつの見所は主人公以外の人物が梨花に対してさまざまな思いを馳せているシーンが幾度も出てくるところだ。このそれぞれの心理状態もとても細かく描写されていた。人に対する憧れや好意など、「言葉には出さないけどそういうこと考えることあるよなぁ」という部分をうまく表現されていると感じた。だからこそ、他の登場人物もきっと梨花を悪くは思っていないだろうと思わせてしまい、そのことが梨花を擁護したくなる気持ちを生むのだろう。
この小説は映画化されるので、自分のイメージが映像化されるのが楽しみではあるが、少し怖い気もしている、、。