「海月と私」1巻 麻生みこと・著
部屋数3つのこぢんまりとした民宿を一人で切り盛りすることになった主人が仲居さんを募集したところ、やって来たのはへんぴな土地柄にそぐわない若く美しい謎の女性、梢でした。人懐っこい梢に振り回される旦那さんと、とびうお荘にやってくる訳ありなお客さんとの交流を描いたマンガです。
主な登場人物は旦那さんと梢だけであり、セリフも少なく静かに進んでいくストーリーに引き込まれました。身分証も持たず身一つでやってきた梢が何者なのかは一切語られず、ミステリアスな部分がとても気になります。するりとやってきてあっという間に馴染み、旦那さんを上手に転がしてしまう梢。そんな彼女を海月に例える様は見事で、詩的だなぁと感じました。
私がハッとしたのは、人の頭ん中なんて覗けないんだから結果オーライならそれでいいじゃないか、と梢が言ったシーンです。こんな風に軽やかに生きていけたなら、どんなにいいでしょうね。コミュニケーション能力の高い梢の言動には学ぶところが多く、大人向けの良質な作品でとても興味深かったです。