星守る犬~普通の人の至る転落への道
星守る犬というファンタスティックなタイトルと可愛らしい犬の絵に惹かれて購入したのですがあまりにハードな話でしばらくへこみました。飼われている犬の目線で話が進むのですが、どこにでもいそうな普通の家族が一家の主人の病気により崩壊しそしてその普通のおじさんがどこまでも転落していくその様を描いています。
娘に拾われた犬をむしろ一番可愛がっている心優しい普通のちょっとだけ家族に対してめんどくさがりなだけの善良な人物をまつ残酷な終わりをみると胸が痛くなりました。少年に対する善意もからまわりでむしろ徒でかえされてしまいうまくいかないスパイラルにあるととことんうまくいかないんだな~とある意味リアルでした。ただ救いだったのはお父さんの終わりの時を優しく忠実な犬が包んでくれたことです。それがなかったらやりきれないだけの話だと思います。そして主人公のおじさんが転落への道を抵抗しなかったのはもしかしたら緩慢な自殺を計っていたように思います。中年になると人はみな世界に対する絶望と諦観を心に抱いて生きているのかもしれません。それをいやしてくれるのは近くにいる優しいささやかな存在なのでしょう。