感想・書評「居酒屋礼讃：森下賢一」ネタバレ注意・いわば「居酒屋学」の入門書ともいえるでしょう（レビュー）。 #読書

『居酒屋礼讃』（森下賢一）：居酒屋はこんなにも魅力的

いまや居酒屋というと、即座に居酒屋チェーン店を思い浮かべるような時代になってしまいました。繁華街を見てもどこもチェーン店ばかりで、個人で居酒屋をやっているお店は絶滅寸前なのではないかと思えるほどです。『居酒屋礼讃』ではこのような現状に憂いと危機感を感じた筆者が、そもそも居酒屋とは何か・歴史的にどのようなものであったか・世界の居酒屋はどのようなものなのかなどをまとめた一冊です。

いわば「居酒屋学」の入門書ともいえるでしょう。この本の魅力は何といっても筆者の居酒屋への愛が感じられることです。普通の人は居酒屋を特徴ごとに分類したり、居酒屋の個性が地方出身者の個性にもつながることに気付いたりはしません。まして、江戸時代から現代にいたるまでの居酒屋の歴史を振り返ってみたり、世界の居酒屋はどのようなものかを調べたりなどしません。これも筆者の居酒屋愛から生まれたものなのです。また、酒飲みらしく文章が洒脱で流れるように読むことができるのもうれしいです。本書で居酒屋の基礎を学び、実際に本書で紹介されている居酒屋にお邪魔すれば、居酒屋の魅力的な世界に足を踏み入れることができるでしょう。お酒好きは必携の一冊です。