」で便利でお安く。宇宙大帝ギンガサンダーの冒険 <<水上悟志短編集Vol.3>> 水上悟志
作者曰く、これまであまり書いてこなかったタイプの話をまとめた短編集です。ただの短編集ではなく、熱血ギャグ、SF、純愛、ホラー、ファンタジーといった様々なジャンルの話が、宇宙大帝ギンガサンダーという冗談みたいな存在により一つの話になっていました。
さびれた工場で作られた一つのおもちゃが人間の魂を食べて巨大化し、星一つを滅ぼしたりスペースコロニーを飲み込んだりし、地球にやってきてヒーロー的な存在に殴られ、異世界に転移して、最後には大地の肥料になるお話でもあります。最後の最後にみんながうまい具合にそれなりに救われる話になっているのは、中々に見事なものです。巻末に載っているのは連載作品である「惑星のさみだれ」の後日談ともいうべき短編です。これまでの水上悟志の連載作品を読んでいると、漫画作品として切り取った大きな物語は終わりを迎えるが、作中の人物たちの人生はこれからも長く続くようなものが多いです。「惑星のさみだれ」も最後には世界を救う物語ですが、そのために戦った騎士たちの多くは戦いとは全く関係ないところで問題を抱えていたり悩んだりしていました。世界を救う物語はそれらを解決してくれませんでしたが、そこで受け取った暖かいものを胸に宿すことで、これからの世界を笑って楽しく暮らせる、そう思わせてくれる短編でした。短編を読んで面白いと思った人は、ぜひ連載作品も読んでください。
