」で便利でお安く。医龍 (コンビニコミック版・最終巻)
医龍の最終巻を読みました。コンビニコミックとして復刻していて、スペリオール誌に連載していた時にとてもいい作品だと感じていたので、旅のお供に出先で購入しました。
医龍はドラマにもなっていますが、原作未見の方には完全に別物なので、改めてみていただきたい作品です。
医龍のよいところはいくつかありますが、ざっくりと３つ挙げておきます。
まずは作品の目的がはっきりしています。
「加藤晶を教授にする」
この目的が主人公と仲間たちの目的で、ぶれることがありません。したがって、加藤晶が教授になったあとは、たった2、3話のエピローグが添えられるのみです。それが読み手に清涼感にも似た、すっきりとした気持ちをあたえてくれます。
その2は、「非常に緻密な心理描写」を挙げます。
わたしは漫画をかなり読むのですが、この医龍が特に素晴らしいのは、とてもフィクションとは思えないほど、登場人物が人間なのです。
この作品の中には、ただひたすら強い人、ただひたすら悪い人、といった漫画的な善悪や強弱はないのです。きっと私たちの回りにいる人もそうだと思うのですが、強い人も一片の弱い心をもち、卑劣に流されてしまうこともあるのです。そして卑劣の人と思っていても、心のなかにたった一つの大切な温もりをしまいこんでいたりするのです。それらの描写が実に秀逸で、その心の内面がキャラクターに人間的な魅力をもたらします。教授戦の最終戦は策を弄する凡人・霧島と、才色兼備の加藤での決戦ですが、つい霧島の応援をしてしまう読者も多かったように感じます。
最後のポイントは、主要な登場人物のそれぞれの物語りに、しっかりと決着がついていることです。
この人物はこれから、このようにして人生を前向きに歩んでいったであろう、ということを強く示唆する内容です。
最後の最後に、読者は、この物語は再生の物語だと気づくのです。
患った人、敗れた人、挫折した人。ねじまがった人。
しかし、人間は生きていけるのです。立ち上がることなどとてもできぬ、できないであろう…それほど傷付いていても、それでも再生していけるのです。そしてその姿は美しく、正しいのだと、登場人物たちは教えてくれます。
わたしたちに爽やかな感動と勇気をくれる「医龍」、ぜひ手にとっていただきたいと思います。
